2012年4月11日水曜日

消化器系の仕組みについて


消化器系の仕組みについて

 

消化器系は口から肛門まで続く長い管状の器官で、(1)食物を摂取する、(2)摂取した食物を栄養素に分解する(消化)、(3)栄養素を血液中に吸収する、(4)消化できない残りの部分を体から排泄するという働きをしています。消化管は口(口のしくみと働きを参照)、のど、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門で構成されています。また、消化器系には膵臓(すいぞう)、肝臓、胆嚢(たんのう)も含まれます。これらは消化管の外側に位置している臓器です。

消化器系の構造

 

消化器が入っている空間を腹腔といいます。腹腔の前面は、皮膚、脂肪、筋肉、結合組織で構成されている腹壁です。腹腔の背面は脊柱に、上部は横隔膜に、下部は骨盤臓器に接しています。また、腹腔は消化器の外側と同じように膜で覆われていて、この腹腔の膜を腹膜といいます。

消化器系と脳は機能上深い関係があります。たとえば、心理的な要因は腸のぜん動、消化酵素の分泌やその他の消化器系の機能に強く影響を与えます。感染症は消化器系のさまざまな病気の原因となりますが、感染症へのかかりやすさも脳の働きに強く影響されます。逆に、消化器系も脳に影響を与えます。たとえば、過敏性腸症候群や潰瘍(かいよう)性大腸炎など長期間にわたる病気や何度も繰り返す病気、あるいは痛みを伴う病気は、感情や行動、日常生活に影響します。この両方向の関係は、脳腸相関と呼ばれています。

胃について

胃は大きなソラマメのような形をした中空の器官で、噴門部、胃体部、幽門部という3つの部分で構成されています。食道を通ってきた飲食物は、輪状の下部食道括約筋を通過して胃に入ります。


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胃の上部は食べものを一時的に収容する場所で、食べものが入ってくると、噴門部と胃体部が弛緩(しかん)して容積が大きくなります。一方、胃の下部、つまり幽門部はリズミカルに収縮して、食べものを胃酸や酵素(胃液)と混合させたり、消化しやすいように小さく粉砕したりします。胃の内面を覆っている細胞は、3種類の重要な消化液成分を分泌します。すなわち、(1)粘液、(2)塩酸、(3)ペプシン(タンパク質を分解する酵素)の前駆体です。(1)粘液は、胃の細胞が塩酸と酵素で損傷しないように胃の内面を保護しています。ヘリコバクターピロリ(H.ピロリ)の感染やアスピリンの服用などによってこの粘液層が損なわれると、胃が損傷を受けて胃潰瘍(いかいよう)の原因となります。

(2)塩酸は、ペプシンがタンパク質を分解するのに必要な強い酸性状態をつくります。また、胃の中が強酸性であることは、食べものと一緒に侵入したさまざまな細菌を殺して感染を防ぐ効果があります。胃酸の分泌は、胃に送られる神経刺激、ガストリン(胃から放出されるホルモン)、ヒスタミン(胃から放出される化学物質)に刺激されて起こります。(3)ペプシンは、タンパク質の1種で肉の主な成分であるコラーゲンを消化する、唯一の酵素です。

胃から血液中に直接吸収される物質は、アルコールやアスピリンなど数種類しかなく、その吸収量もごくわずかです。

小腸について

食べものは胃から十二指腸へと送られます。十二指腸とは小腸の最初の部分です。食べものは、幽門括約筋でできている幽門を通って、小腸が消化できるよう少しずつ十二指腸に送られます。食べものがたまっているときには、十二指腸は食べものを送らないように胃に合図を送ります。

十二指腸には、膵臓から分泌される膵酵素と、肝臓と胆嚢から分泌される胆汁が、オディ括約筋と呼ばれる開口部を通って流れこみます。この2種類の消化液は消化と吸収を助ける重要な働きをしています。ぜん動も、食べものをもみ動かして分泌液と混合させることによって消化吸収を促進します。

十二指腸の始まりから約58センチメートルの部分は内面がなめらかですが、それより先の内面には輪状ひだや小さな突起(絨毛[じゅうもう])、さらに小さな突起(微絨毛)があります。この絨毛と微絨毛によって内面の表面積が大きくなっているため、十二指腸はより多くの栄養素を吸収できるのです。


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十二指腸より先の小腸の部分は、空腸と回腸と呼ばれます。この2つの部分は、主に脂質やその他の栄養素の吸収を行っています。空腸と回腸は内容物をもみ動かす働きがあり、また輪状ひだ、絨毛、微絨毛によって内側の表面積が広くなっています。このことは栄養素の吸収を容易にしています。小腸壁には血管が豊富にあり、門脈を通して栄養を肝臓に運んでいます。小腸壁は、小腸の内容物をなめらかにするための粘液と、消化された食物片を溶解するための水分を分泌します。タンパク質、糖質、脂質を消化する酵素も少量分泌されます。

小腸の内容物の硬さは、小腸を通過するにつれて変化していきます。十二指腸では、膵臓の酵素と胆汁で薄められて、強い酸である胃酸が弱められます。続いて小腸下部を通過するとき、水分、粘液、胆汁、膵臓の酵素と混合されて水っぽい状態になります。最終的には、栄養の大部分と水分が小腸で吸収され、内容物は約1リットルの水分を含んだ状態で大腸へと送られます。

すい臓について

膵臓は2種類の組織で構成されている臓器です。1つは消化酵素を産生する腺房組織、もう1つはホルモンを産生する膵島組織です。膵臓が産生する消化酵素は十二指腸へ、ホルモンは血液中へと分泌されます。

アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素は腺房組織の細胞から分泌され、細い管を通って膵管に流れこみます。膵管は総胆管と合流します。合流点はすぐ十二指腸へとつながっていて、この十二指腸への開口部にはオディ括約筋と呼ばれる輪状の筋肉があります。各種の酵素は膵臓で不活性の状態で分泌され、消化管に到達してから活性化されます。アミラーゼは炭水化物を消化し、リパーゼは脂肪を、トリプシンはタンパク質を消化します。膵臓はまた、大量の炭酸水素ナトリウムを分泌して、胃から流れてくる胃酸を中和することで十二指腸粘膜を保護しています。

膵臓では3種類のホルモンが産生されます。糖(ブドウ糖)を血液中から細胞に移動させて血糖値を下げるインスリン、肝臓に蓄えられている糖を血液中に放出させて血糖値を上げるグルカゴン、インスリンとグルカゴンの分泌を抑制するソマトスタチンです。

肝臓について

肝臓は大きな臓器で、たくさんの機能を果たしています。そのうちいくつかの機能が消化に関係しています。


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食品中の栄養素は、小腸壁で吸収されて、小腸壁に豊富に存在する微細な血管(毛細血管)に入ります。毛細血管は静脈に集まり、静脈はさらに大きな静脈に集まり、最終的には門脈として肝臓に入ります。門脈は肝臓内で小さな血管に分かれ、流れこんでくる血液を処理しています。

肝臓に入ってきた血液は2通りの方法で処理されます。小腸で吸収された細菌やその他の異物は除去されます。小腸で吸収された栄養は体内で利用できるようさらに分解されます。肝臓はこれらの処理を高速でこなして、栄養豊富な血液を全身に送っています。

肝臓は、体内のコレステロールのおよそ半量を産生します。残りの半量は食べものから摂取されます。肝臓でつくられるコレステロールのおよそ80%が胆汁の産生に使われます。肝臓から分泌された胆汁は、必要になるまで胆嚢で貯蔵されます。

胆嚢と胆道について

には左肝管と右肝管という管があり、胆汁はこの管を通って外に流れ出ます。左肝管と右肝管は合流して総肝管となり、さらに、胆嚢から発した胆嚢管と合流して総胆管となります。総胆管は、ちょうど膵管がオディ括約筋を通過して十二指腸に流れこむ場所で膵管と合流します。

食事中以外は、胆汁は胆嚢に貯蔵されていて、わずかな量しか小腸に流れこみません。食べものが十二指腸に入ると、それが引き金になって、胆嚢の収縮を指示する一連のホルモンと神経の刺激反射が起こります。その結果、胆汁が十二指腸に流れこんで食べものと混ざり合います。

胆汁には2つの重要な機能があります。1つは脂質の消化と吸収を助ける機能で、もう1つは不要になった老廃物、特に破壊された赤血球のヘモグロビンと過剰なコレステロールを体外へ排泄する機能です。具体的には、胆汁は以下のような作用にかかわっています。

·           胆汁に含まれる胆汁酸塩は、コレステロール、脂質、脂溶性ビタミンの溶解性を高め、吸収しやすくする。

·           胆汁酸塩は、大腸の内容物が通過しやすいように大腸で水分の分泌を促す。

·           破壊された赤血球の老廃物であるビリルビン(胆汁の主な色素)は、胆汁中へと排泄される(便が緑色から褐色をしているのは、このビリルビンによるもの)。


·           薬などが代謝された後にできる物質(代謝物)は胆汁中へと排出され、その後体外へ排泄される。

·           消化吸収で重要な役割を果たすさまざまなタンパク質が胆汁中へと分泌される。

 

胆汁酸塩は小腸の最後部で回収され、肝臓で再処理されて胆汁中に再分泌されます。この胆汁酸塩の再循環は腸肝循環と呼ばれています。体内の胆汁酸塩は1日に約1012回循環しています。胆汁が腸を通過するとき、ごく一部は大腸に到達して、常在細菌によりさまざまな成分に分解されます。そのうち一部は再吸収され、残りは便とともに排泄されます。

大腸について

大腸は盲腸、上行結腸(右側)、横行結腸、下行結腸(左側)、そして直腸につながるS状結腸で構成されています。盲腸は上行結腸の始まりの部分で、小腸が大腸に移行する所です。盲腸からは虫垂が突き出ています。虫垂は指のような形をした小さな管状の器官ですが、特に機能はないと考えられています。大腸は粘液を分泌します。そして、便から水分を吸収する役目を果たしています。

腸の内容物は大腸に到達するときには液状になっていますが、通常は直腸に達するころには固形になり、便となります。大腸にはさまざまな細菌が生息していて、腸の内容物のいくつかの成分をさらに分解します。この分解過程でガスが発生します。大腸の細菌類は、血液凝固に必要なビタミンKなど重要な物質も産生しています。この細菌類は大腸が正常に機能する上で必要なものです。ある種の病気や抗生物質によって細菌類のバランスが崩れてしまうと、刺激が生じて粘液と水分の分泌が高まり、下痢が起こります

直腸と肛門について

直腸は大腸の終わりのS状結腸に続く部分で、最後は肛門へと続いています。普通、便は下行結腸にとどまっているため、直腸は空になっています。下行結腸でいっぱいになった便が直腸に下りてくると便意が起こります(排便)。成人や年長児はトイレに入るまで便意をこらえることができますが、幼児や年少児は肛門の筋肉を調節する機能が発達していないため、排便を遅らせることができません。

肛門は消化管の最後に位置する開口部で、体から便を排泄する所です。肛門は、腸の組織と皮膚などの体表組織とでできていて、肛門を覆っている皮膚は体の外側の皮膚とつながっています。肛門には輪状の筋肉(肛門括約筋)があります。排便のとき以外は、肛門括約筋が収縮しているため、肛門は閉じています。



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